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2012年12月07日

傾聴ボランティア

東日本大震災後、現地に赴きボランティア活動で主に肉体労働奉仕をおこなった。うちの僧堂の雲水もワゴン車をレンタルして寝袋・食料・水・スコップ等々一式積み込んで出かけた。コンクリートの上に直に寝たのが堪えましたと言っていたが、皆元気で溌剌として帰ってきた。少しでも被災者のお役に立てたという充実感なのだろう。こういうボランティアも一応終わって、仮設住宅も完成し不自由ながら何とか生活のめどが立ってほっと一息ついたところで、次は心のケアーが必要になってきた。そこで妙心寺派では花園大学を中心に専門家の指導の下、傾聴の方法を実地訓練し、マスターした者に証明書を発行し現地で実際に活動して貰う事をやっている。私も是非其の訓練に参加してみたいと思っているうちに実現できず終わってしまった。そんなことが心の隅に残っていたある日、知り合いのお医者さんから頼まれて、この傾聴ボランティアに出かけなければならなくなった。相手は末期癌の患者さんで、余命もあまりないという切迫した状況で、果たして私のような者に何が出来るか心配しながらの面会になった。全く自信は無かったが、考えても仕方が無いことなので、ここは「なりきる」ことしかないとこころに決めた。以前管長猊下といろいろなことを話していた時、この傾聴ボランティア実地訓練の話が出て、難しいのは「ひたすら聞き続ける」ことですと言っておられた。つい喋ってしまうのだそうで、これが相手の心を一番傷つけることになる。ふっとその言葉を思いだし、初めての経験で全く自信は無かったが、兎も角じっと耳を傾け相手の心に寄り添うことだと思い出かけた。約一時間じっと聞き続け、時々ちょっと言葉を添えた。途中何度もはらはらと涙をこぼされたり、また笑顔を見せられたりで、お別れした。翌日依頼された先生からお電話があった。少しでもお役に立てたでしょうか?と申し上げると、「大変心が安らぎ喜んでいました」、ということを聞き、嗚呼、良かった!ほっとして私の心が安らいだ。

投稿者 zuiryo : 2012年12月07日 09:38

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