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2010年08月25日

豆腐

うちの門前には市内で一番美味しい豆腐と評判の店がある。夫婦二人きりで間口1間ほどの小さな店だがひっきりなしに客が来る。わざわざ車で遠くからも買いに来る。先代のご主人は気骨のある方で、お寺とも土地の関係でいろいろ行き来もあったり、夕方豆腐や揚げなど余ると僧堂の雲水さんへといつも持ってきて下さったりで、親しくさせて頂いていた。今はその息子さんが後を立派に引き継いで奥さんと二人で頑張っておられる。僧堂へのご厚情も先代さん同様引き継がれ、また私とほぼ同年齢と言うこともあって、以前に増して交流が深まった。豆腐は実に簡単な製法で、ちょっと見には誰でも出来そうに思えるが、こういう単純なものほど奥行きが深く難しいものである。昔、知り合いの料理屋さんで大変繁盛していた方が、更に商売繁盛を考え、新たに豆腐料理屋を始めることになった。そこで数千万円もの投資をして豆腐製造装置を買い、試作を始めた。ところが幾らやっても旨い豆腐が出来ない。その失敗作を捨てるのも勿体ないと何十丁も僧堂に呉れた。度重なるうちに食い物なら何でも口に入れる雲水ですら、もう結構ですと音を上げたことがある。結局最後まで旨い豆腐は出来ず、その話しはパ~になった。豆腐を見くびっていたのである。何事も端から見ているのと実際にやってみるのとは雲泥の差があるのだ。さて門前の豆腐屋さん、相変わらず繁盛し続けているのだが、後継者難、立派な息子さんが二人もいるのだが、それぞれサラリーマンとして安定した生活を送っているので、毎日午前3時に起きて、冬、身を切るような冷たい水仕事をするのは相当抵抗があるらしい。大体奥さん方が承知しない、ごもっともな話ではある。しかしこれだけ有名になった豆腐屋さんでもあり、幾ら日本人の食生活が変わっても、これからも豆腐は愛し続けられると思うので、何とかならぬものかと、他人事ながら心配している。

投稿者 zuiryo : 2010年08月25日 13:25

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