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2021年03月04日

悪のプロ

刑務所で服役中のものの精神的ケア~係を教誨師という。人生経験豊富な人で、そう言う犯罪者の更生に一肌脱ごうという奇特な方々である。うちのお寺の役員をしておられる和尚さんでこの教誨師を永年勤めておられた方が居た。その方が、生真面目で見所のある男だと太鼓判を押した服役者がいて、是非出家して僧侶となって、これからの人生は自分があやめた人たちの供養をして生きたいと言うので、自分が責任者になって、この男の願いを叶えるべく、奔走された。間もなくして本人を僧堂に連れてきた。60才をゆうに超えたくらいの小柄な男だった。見るからに実直そうで、この男なら本心からそうだと思い受け入れることにした。僧堂入門後の様子は生真面目でコツコツ、服役中の訓練で仕込まれたのか何事でも器用で、こんな便利な男はなかった。しばらくすると体の調子が悪いというので、こちらで費用を持ってやり病院へ通わせた。しかし年月を経るうちに、愈々本性が現れ出た。病院へ通うというのも全て暇を得たいという方便で嘘っぱちだった。この男の仲介役を負った教誨師の和尚さんが、癌で亡くなるやいなや、チャンスとみて忽然と出奔した。それから僧堂時代に仲間だった和尚のところへ訪ね回っては、嘘で塗り固めて様な話を言葉巧みにしては、百万単位で金をせびり、一通り行き尽くしたとみるや、忽然として姿をくらました。これがこの男の正体だったのだ。たかられた連中の話を総合すると、実に言葉巧みに哀れさを装い、嘘で塗り固めた話しをしていたらしい。つまり筋金入りの悪だったのだ。まっ、我々のような僧堂修行が専門の者など、赤子の首をひねるようなものだったのだ。世の中には「悪のプロ」が居ると言う事を初めて知った。

投稿者 zuiryo : 2021年03月04日 09:43

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