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2019年08月14日

孟母三遷

私のうちは両親が小さな洋品屋をやっていた。朝早くから夜遅くまでコマネズミのように働いて我々四人の子供を育ててくれた。うちの裏側は真言宗のお寺さんの墓地だった。昔は全て土葬だったから、お葬式がある日は早朝から墓堀りの叔父さんが二人やって来て、ぶら下げてきた一升瓶の酒をちびちび飲みながら半日掛けて墓穴を掘った。他の兄弟は誰もそんな事には興味が無かったが、私だけ一人、墓堀が始まると異常に興奮した。それは葬儀が終わって葬列を組みいよいよ墓に棺桶を埋める瞬間が何と言ってもクライマックスだったからだ。こいつバカじゃ無いか!と他の兄弟からは白い目で見られたが、一向に意に介せず、そんな日は朝からウキウキしていた。近所のガキどもが集まってメンコやコマ回しなど一緒にやっていても、途中何度も抜け出しては棺桶を埋める瞬間を見逃すまいと、進捗状況の偵察に往き来した。いよいよその瞬間が来た。昔のことだから女性は皆喪服を着ていたが、棺桶が墓穴に入るとき、能面のようだった顔がグシャグシャになるほど大泣きをして、中には棺桶にしがみつく人まで居た。何とこの劇的な変化!これが小さいときの私の唯一の趣味だった。変人!!隣が墓地だったから私はお坊さんになった!

投稿者 zuiryo : 2019年08月14日 10:02

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