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2016年02月14日

女性能楽師

女性能楽師というと直ぐに白洲正子さんが浮かぶ。彼女はプロだったわけでは無いが、若い頃から数十年も続け、あるときプッツリやめた。理由は女性として越えられない何かを感じられたようだ。知人で学生時代から数十年、づっと能を続けておられる女性がいる。ご自分の家を新築するとき、能の稽古場まで作られたほどだ。又別の友人で、ずっと謡曲を稽古され、還暦を機に、名古屋の能楽堂で能を披露された方も居る。このように私の周辺では謡曲に入れあげる人、能に入れあげる人等々、所謂古典芸能が盛んだ。特に謡曲は沢山の方々がやって居られ、古希の祝い、喜寿の祝い、その他ゴルフのエ-ジシュートの祝宴に至るまで、宴たけなわになると必ず謡曲が披露される。老人の男性十人くらいの朗々たる謡曲はなかなか良いもので、その会がぐっと盛り上がる。さてくだんの女性能楽師、下手な男は側にも寄り付けない雰囲気をお持ちなのだが、昨年秋、市の仕事の関係で20人くらいの団体でイタリヤのフィレンツエへ出掛けた。途中半日ほど一行と別れ、彼女がどうしても見たい絵が在るというので、ガイドさんとマイクロで超田舎へ出かけた。何故彼女がそうもこだわってこの絵を見に行きたいと思われたのかというと、以前絵のグループでイタリヤ各地の絵を見て回ったとき、もっとじっくり見ていたいと思う絵があったのだが、時間の関係で早々に帰ってしまった。そのことがずっと頭に残っていて、今回図らずも近くの都市まで行ったので、別行動を取ってもこのチャンスは逃せないと思われたのである。女性一人きりやるのも心配なので、まっ、私が同行させて頂いたというわけなのだが、その絵の前に佇み、釘ずけになった。巨大な絵で、第二次世界大戦の時は、この絵を守るため村人総出で大きな穴を掘り、埋めて守ったそうだ。中央にマリヤさんが居て、周囲を女性が囲んでいる。崇高なマリヤの顔や姿は、思わず引き込まれた。この絵をもう一度見たいと出掛けたこの女性能楽師のこだわり、執念、これだと感じた。だから何十年もお能を続けてこられたのだ。

投稿者 zuiryo : 2016年02月14日 09:06

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