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2013年12月08日

色紙書き

10年ほど前、人から勧められて干支の色紙を書き始めた。最初の頃は百枚くらいだったのが、知らぬ間に年々増えて、今年はついに七百枚になってしまった。さすがに困り果てた。書くのも労働だが、使う墨をするのも重労働、更にそれらを梱包して送るのも一仕事である。一昨年までは毎晩礼状を添え色紙にベニヤ板をあてがい封筒に詰めてセロテープで閉じる。この一連の作業を連日連夜やっているうちに腱鞘炎になってしまった。そこで昨年からは予想される相手にまとめて一斉に送ることにした。封筒に入れるまではすべて雲水にやって貰い、私は住所書きだけにした。これでぐっと楽になった。ふっと雲水時代のことを思い出した。隠侍は墨すりが仕事で、必死にすった。ところが硯の手入れを知らないから、ガラスの表面のようになった硯に力任せに墨をする。いくらやっても全然濃くならない。当たり前のことで、合わせ砥で目を立てていないからである。そんなこと誰も教えてくれず、墨すりとは何と重労働なものかと思っていた。無知ほど恐ろしいものはない。時間までに間に合わせなければ叱られること必定だから、奥の手の秘密兵器を使い、当時チューブ入りの合成墨があり、それを適当に混ぜて持って行った。ところが十分混ぜ合わせてなかったため、老師が筆を入れいざ書こうと穂先を上げると墨の塊がぼとぼと落っこちた。「お前な~、こう濃くすっちゃ~いかんぞ」。思わず肝が冷えた。私はすべて自分で墨はする。墨の濃さが重要だから、何も知らない雲水などにすらせるわけには行かない。まっ、師匠ほど墨跡を頼まれることもないのでそれで十分なのである。

投稿者 zuiryo : 2013年12月08日 20:26

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