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2010年04月11日

朋遠方より来たる

今年もブラジルからE氏ご夫妻が帰国され、お忙しい中わざわざ岐阜までお出で下さった。氏は77歳に成られるそうだが、顔の色つやも良く、体力気力とも充実している様子が窺われた。10年以上果樹園を続けてこられ、ブドウも柿も桃も立派に木が育ち、本当はこれからの収穫が楽しみなのだが、年齢には勝てず、遂にどなたかに売却する決心をされた。丹誠込めて土作りから手がけられ、漸く良くなってきた果樹園なので、手放すことは相当苦渋の決断だったと推察される。しかし既に数年前からご家族の方々ともよくよく話し合われていたことなので、気持ちの上では一応のけりを付けられたのではと思われる。これからはまた別のことで少しでも人様のためにお役に立ちたいと願っておられるので、体の動くうちは何事か始められるに違いない。E氏の話を伺っていると、自分の怠慢さに気づかされ、気が引き締まる思いである。私の仕事は専ら僧堂内に居て、雲水相手の事柄だから、ややもすると高慢に陥りやすい。そう言う意味では世間知らずの典型みたいなものだから、「高山植物」などと悪口を言われる。まっ、高山植物も悪くはないが、僧堂と雖も世俗と別ではないのだから、里に下ろしたら直ぐに枯れたと言うことにならぬよう、精々頑張って美しく咲き続けたいものだ。遅れていた鶯の声もこのところしきりに聞かれるようになった。モミジやドウダンの枯れ枝のように見えていた先っぽに、あっと言う間に新芽が吹き、一日一日ずんずん伸び、今日あたりはもう立派な葉の格好をしている。先程のE氏もその庭を見ながら、四季の移ろいの素晴らしさを、頻りに羨ましがっておられた。ブラジルでは年中殆ど同じだそうで、情緒がないそうだ。日本で暮らしていればこんな事は当たり前で、特別感じないが、言われてみれば有り難いことである。

投稿者 zuiryo : 2010年04月11日 20:16

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